会議で発言できない悩みを解消:自信を持って意見を伝えるアサーション技術
会議での沈黙を破る:自信を持って意見を伝えるアサーション技術
会議やディスカッションの場で、「何か言いたいことはあるか」と問われても、つい黙ってしまう。自分の意見やアイデアはあるのに、うまく伝えられず、後で後悔する。多くの人が経験する悩みかもしれません。特に、目上の人がいる場や、議論が白熱している場面では、発言することに躊躇を感じやすいものです。
しかし、会議での発言は、単に自己満足のためではありません。自身の考えを共有することで、チームや組織全体の意思決定に貢献し、プロジェクトをより良い方向へ導く可能性があります。また、自身の存在感を高め、評価に繋がることもあります。
ここでは、相手との関係性を損なわずに、会議で自信を持って発言するための「アサーション」というコミュニケーション手法について解説します。
なぜ会議で発言できないのか
会議で発言をためらう背景には、様々な要因が考えられます。
- 失敗への恐れ: 間違ったことを言ってしまったり、批判されたりすることへの不安
- 遠慮や謙遜: 自分なんかが発言するのはおこがましい、他の人の意見の方が優れているという思い込み
- 対立の回避: 自分の意見が他の人と異なった場合、議論がこじれるのを避けたい気持ち
- 準備不足: 自分の考えがまとまっておらず、適切に表現できる自信がない
- 発言のタイミングが分からない: いつ口を挟めば良いか判断に迷う
これらの要因は、決して特別なものではありません。多くの人が程度の差こそあれ、抱えている感情や状況です。重要なのは、これらの感情に支配されることなく、自分の意思を適切に表現するスキルを身につけることです。そのための有効な手段がアサーションです。
会議でのアサーション:基本原則とメリット
アサーションとは、「相手の権利や気持ちも尊重しながら、自分の気持ちや考え、要求を率直に、誠実に、対等に表現する」コミュニケーションのことです。会議の場においては、単に自分の意見を押し通すことでも、相手に迎合して沈黙することでもありません。
アサーションの基本原則は以下の通りです。
- 自己表現の権利: 自分自身が考え、感じ、意見を述べる権利があることを認識する
- 相手の尊重: 相手にも同様の権利があることを認め、その立場や意見を尊重する
- 率直さと誠実さ: 自分に嘘をつかず、正直に、誠実にコミュニケーションをとる
- 対等な関係: 上下関係に関わらず、人間として対等な立場で向き合う
これらの原則に基づいたアサーティブなコミュニケーションは、会議において以下のようなメリットをもたらします。
- 建設的な議論の促進: 参加者それぞれが安心して意見を出し合える雰囲気が生まれます
- 誤解の防止: 自分の意図を明確に伝えることで、解釈のずれを防ぎます
- 関係性の向上: 互いを尊重する姿勢が、信頼関係を築きます
- 自己肯定感の向上: 自分の意見を表明できることで、自信が高まります
会議で使えるアサーションテクニックと例文
会議での発言機会を捉え、アサーティブに意見を伝えるための具体的なテクニックと例文をご紹介します。
1. 発言のきっかけを作る
会議の流れの中で、自然に発言の機会を捉えることが重要です。
- 賛成意見を述べる:
- 「〇〇さんのご意見に賛成です。特に△△の点は非常に重要だと感じました。」
- 「今の□□さんの提案は素晴らしいと思います。具体的に~という点で共感しました。」
- 質問をする:
- 「恐縮ですが、一点質問させていただけますでしょうか。先ほどの△△について、もう少し詳しくお伺いできますでしょうか。」
- 「□□について確認させてください。それは具体的にどのような意味でしょうか。」
- 進行を促す/整理する:
- 「ここまでの議論を踏まえ、一度現状を整理するのはいかがでしょうか。」(少し上級向けですが、議論がまとまらない場合に有効です)
2. 自分の意見・アイデアを伝える(DESC法を応用)
複雑な意見や提案を伝える際には、アサーションの基本的な枠組みであるDESC法(Describe, Express, Specify, Consequences)の考え方を応用すると、論理的に、かつ相手への配慮を示しながら伝えられます。
- Describe(描写): 客観的な状況や事実を述べます。
- Express(表現): それに対する自分の感情や意見、考えを「私は」を主語にして伝えます。
- Specify(特定): 具体的にどうしたいか、どうして欲しいかを提案します。
- Consequences(結果): その結果、どうなるかを伝えます。(自分や相手、チームにとってのメリットなど)
例文:プロジェクトの進め方について提案したい場合
- Describe:「現在の〇〇プロジェクトの進捗についてですが、△△の段階で少し遅れが生じているようです。」
- Express:「このままでは納期に影響が出るのではないかと懸念しております。」
- Specify:「つきましては、□□のタスクの優先順位を上げ、AさんとBさんで連携して集中的に進めてみてはいかがでしょうか。」
- Consequences:「そうすることで、△△の遅れを取り戻し、全体のスケジュール通りに進められる可能性が高まると思います。」
※会議では上記を全て盛り込む必要はありません。状況に応じて適宜組み合わせて使用します。特にExpressの部分で「私は〜と感じています」「私の考えでは〜です」のように「Iメッセージ」を使うことで、主観であることを明確にしつつ、自分の意見を伝えることができます。
3. 反対意見や懸念点を伝える
他の人の意見に反対する場合や、懸念点がある場合も、相手を否定するのではなく、意見の違いとして、かつ自分の考えを伝える形でアサーティブに述べます。
- 「〇〇さんのご提案、ありがとうございます。△△の点については大変参考になります。」(まず相手の意見の一部や意図を受け止める)
- 「その上で、一点、□□の点について懸念がございます。」(懸念があることを伝える)
- 「と言いますのは、~という状況が考えられ、それが□□に影響する可能性があると思うからです。」(なぜそう考えるのか、理由を説明する)
- 「代替案として、~という方法も検討してみてはいかがでしょうか。」(対案を示す)
4. 話が長い相手への対応
会議の時間を有効に使うため、話が長い相手に対して、進行を妨げずにアサーティブに軌道修正を促す必要が出てくることもあります。
- 「〇〇さん、大変申し訳ございませんが、お話の途中で失礼いたします。」(中断の許可を求める)
- 「ただ今のご説明で△△についてはよく理解できました。」(相手の話の一部を受け止める)
- 「つきましては、次の議題である□□について検討を進めたいのですが、よろしいでしょうか。」(次のステップへの移行を提案する)
実践のためのステップ
会議でアサーティブに発言することは、練習によって身につけることができます。
- 小さなことから始める: まずは賛成意見を述べる、簡単な質問をするといった、心理的な負担の少ない発言から試してみてください。
- 発言内容を準備する: 会議の前に議題を確認し、自分の考えや質問したいことをメモしておくと、落ち着いて発言しやすくなります。
- 「Iメッセージ」を意識する: 「私は〜と思います」「私は〜と感じています」のように、主語を「私」にして話すことで、相手を非難することなく、自分の主観や意見を伝えることができます。
- 発言の意図を明確にする: 自分の発言が、情報共有、質問、提案、確認、懸念の表明など、どのような目的を持っているかを意識すると、伝えるべき内容が整理されます。
- 振り返りを行う: 会議後に、自分がどのように発言できたか、次回に向けて改善できる点はないかを振り返ります。
まとめ
会議での発言に苦手意識がある方も、アサーションのスキルを学ぶことで、その課題を克服し、自信を持って自己表現できるようになります。アサーティブな発言は、自分自身の成長に繋がるだけでなく、チームや組織全体のコミュニケーションを活性化させ、より良い成果を生み出すことにも貢献します。
今回ご紹介したテクニックや例文を参考に、ぜひ日々の会議の中でアサーションを実践してみてください。焦らず、小さな一歩から始めることが重要です。あなたの声が、きっと会議に新たな視点をもたらすでしょう。