「NO」を伝える技術

アサーションは誰でもできる:自信ゼロから始める自己主張の練習法

Tags: アサーション, 自己肯定感, 自己主張, コミュニケーションスキル, 練習法

自信がないと感じるあなたへ:アサーションは練習で身につくスキルです

仕事やプライベートにおいて、自分の意見や要望を伝えたいのに、「自信がない」「どうせうまくいかないだろう」「相手に悪く思われたらどうしよう」といった不安から、つい黙り込んでしまったり、相手の意見に合わせてしまったりすることはありませんでしょうか。

このような経験が多い場合、「自分にはアサーションは難しい」と感じてしまうかもしれません。しかし、アサーションは生まれ持った性格ではなく、誰もが後から学ぶことのできるコミュニケーションスキルです。たとえ現時点で自信がないと感じていても、適切なステップで練習を重ねることで、少しずつ自己主張できるようになります。

この記事では、自信がない方がアサーションを始めるための心構えと、今日から実践できる具体的な練習ステップをご紹介します。

なぜ自信がないとアサーションが難しく感じるのか

自信がないと感じる方がアサーションに難しさを覚える背景には、いくつかの理由が考えられます。

これらの感情や思考パターンは、アサーティブな行動を阻害します。しかし、大切なのは、「自信があるからアサーションができる」のではなく、「アサーションを練習することで自信がついてくる」という側面もある、と理解することです。

アサーションの基本を再確認:自信の有無に関わらず持つ権利

アサーションとは、相手を尊重しつつ、自分の気持ち、考え、要望を正直に、率直に伝えるコミュニケーションスタイルです。「攻撃的」な自己主張のように相手を傷つけたり、「受動的」な態度のように自分を抑え込んだりするのではなく、自分も相手も大切にする「誠実」なコミュニケーションを目指します。

アサーションの根幹には、以下のアサーション権という考え方があります。

これらの権利は、自信があるかないかにかかわらず、すべての人に等しく与えられている、という考え方です。アサーションの練習は、これらの普遍的な権利を、現実のコミュニケーションで使えるようにするためのプロセスと言えます。

自信ゼロから始めるための心構え

アサーションの練習を始めるにあたり、完璧主義を手放し、以下の心構えを持つことが役立ちます。

具体的なアサーション練習ステップ

それでは、自信がない方が無理なく始められる具体的な練習ステップをご紹介します。

ステップ1:自分の気持ちや意見を「認識する」練習

自己主張の第一歩は、自分自身が「どう感じているか」「何を考えているか」を正確に認識することです。普段から自分の内面に意識を向ける練習をしましょう。

このステップは、誰かに伝える必要はありません。まずは自分自身が、自分の内なる声に耳を傾けることから始めます。

ステップ2:リスクの低い状況で「表現する」練習

自分の気持ちや意見を認識できるようになったら、次はそれを実際に口に出して「表現する」練習です。まずは心理的な負担の少ない状況を選びましょう。

これらの状況は、相手からの否定的な反応を受けるリスクが比較的低いものです。自分の言葉で相手に伝える、という行為自体に慣れることが目的です。

ステップ3:非言語的要素を意識する練習

アサーションは言葉だけでなく、声のトーン、表情、視線、姿勢といった非言語的な要素も重要です。これらの要素を意識することで、より自信があるように見え、メッセージも伝わりやすくなります。

これらの練習は、鏡を見ながら、あるいは信頼できる人にフィードバックをもらいながら行うことも有効です。

ステップ4:簡単な「NO」を伝える練習

「断る」ことは、アサーションの中でも特に難しさを感じやすい側面です。まずは、断ること自体に慣れるための簡単な練習から始めましょう。

最初から完璧な理由や言い訳を用意する必要はありません。まずは「NO」という言葉やそれに類する表現を口にする練習です。

ステップ5:DESC法の簡易版を試す

アサーションの代表的なフレームワークであるDESC法(Describe, Express, Specify, Consequence)は、複雑な状況で構造的に伝えるのに役立ちますが、最初は全てを使うのが難しければ、一部から試してみましょう。

DESC法を全て使えずとも、自分の感じたことや考えたこと、そして相手への具体的な要望をセットで伝える練習は、関係性を損なわずに建設的な対話をする上で非常に有効です。

小さな成功体験を積み重ねる重要性

これらの練習ステップで、たとえ小さなことでもアサーションがうまくいった経験は、大きな自信につながります。「伝わった」「受け入れてもらえた」という肯定的な経験が、「次もやってみよう」という意欲を生み出し、アサーティブな行動のサイクルを回し始めます。

壁にぶち当たった時の対処法

練習中に相手から予期せぬ反応があったり、うまくいかなかったりすることもあるかもしれません。そんな時は、自分を責めすぎないことが大切です。

まとめ

自信がないと感じる状態からアサーションを始めることは、決して不可能なことではありません。それは、段階を踏んで練習し、少しずつ慣れていくスキル習得のプロセスです。

まずは、自分の気持ちや考えを「認識する」ことから始め、感謝を伝える、簡単な質問をする、といった「リスクの低い表現」で実践を重ねましょう。非言語的な要素を意識し、簡単な「NO」やDESC法の簡易版にも挑戦してみてください。

小さな成功体験を積み重ねることで、アサーションへの抵抗感は薄れ、少しずつ自信が育まれていくはずです。完璧を目指さず、今日からできる小さな一歩を踏み出してみましょう。あなたも、自分自身と相手を大切にするアサーティブなコミュニケーションを身につけることができます。